ロンドン自然史博物館:シロナガスクジラの3Dスキャン・プロジェクト

1905年にディッピーロンドン自然史博物館で公開されると、またたく間に大評判になりました。112年にわたって最大の呼び物の1つだったこのディプロドクスの骨格標本は、アニメやニュース報道に登場して世界中で有名になり、映画やテレビの製作で中心的な役割まで演じました。

2016年、ディッピーが引退し、代わって、世界最大の現生哺乳類であるシロナガスクジラの骨格、ホープが、1979年からディッピーが鎮座していたヒンツェホールの天井から吊り下げられることになると発表されました。

ロンドン自然史博物館に新たに展示されたシロナガスクジラの骨格標本「ホープ」

ロンドン自然史博物館に新たに展示されたシロナガスクジラの骨格標本「ホープ」

3Dスキャンと考古学が出会うとき

シロナガスクジラの骨格の展示に備え、ロンドン自然史博物館の古生物部門の科学者たちは、この展示物を構成する骨格、なかでも巨大な頭蓋骨を3Dスキャンする必要がありました。他のプロジェクト用に3Dスキャナーをすでに購入していたものの、そのスキャナーが申し分なく適しているのは、博物館のスキャンニーズのほとんどを占める作業テーブルに置ける物に対してだけでした。シロナガスクジラの頭蓋骨は長さ6メートルにもなるため、科学者たちは、利用できる技術の限界に気付きました。科学者たちは、3Dスキャン・プロジェクト実施に役立つ専門知識をMeasurement Solutions社に求めました。

必要なのは、飛行機の格納庫に吊り下げられた、巨大生物の頭蓋骨を正確にスキャンできる技術でした。また、スキャン・プロセスの際に対象物が動く可能性が高いこと、そしてシロナガスクジラを展示する準備を整えるための時間的制約が厳しく、作業期間が限られることも考慮する必要がありました。博物館の科学者たちは、技術者が頭蓋骨とその基礎構造にコーティングやスプレーを一切行わないことという条件も出していました。つまり、厳しい条件で、スプレーやコーティングをすることなく、高精度に、そしてできるだけ早く大型の対象物をスキャンし、しかも1回で成功させるというのが科学者たちの希望でした。

求められている作業はこれまでに例のない難題でしたが、測定ソリューション部門はこの無理難題を解決するために、作業を管理し、できる限り効率的かつ容易に実行するための3ステップのアクション・プランを提示しました。

 

ステップ1:フォトグラメトリーで3Dスキャン環境を整える

まず技術者たちは、頭蓋骨周辺に一連の反射する小さなターゲットを割り付けることから始めました。Creaformのフォトグラメトリー・システムで、各ターゲットの正確な位置を割り出すのに使用する、一連のデジタル画像を撮影しました。これにより、技術者は数日間に及ぶ予定の3Dスキャン・プロセスを通して一貫して変わらない基準点系を獲得しました。時間の経過とともに、このシンプルなプロセスによって、頭蓋骨のスキャンに要す時間が大幅に削減できているということが明らかになりました。

頭蓋骨がワイヤーで吊り下げされていることから動きの影響を受けやすいため、これが、MaxSHOT 3Dフォトグラメトリー機器を使用する大きな利点の1つでした。ターゲットのいくつかは頭蓋骨と頭蓋骨につながる骨格に直接取付られていたため、スキャン・プロセスの際に何かが動けば、頭蓋骨もフォトグラメトリー・ターゲットも一緒に動くことになります。これにより、スキャンデータ・セット間の基準が保たれるため、そのエリアを再度スキャンする必要が発生しません。ダイナミック・トラッキングと呼ばれるこのプロセスによって、複数のスキャンエリアをベストフィットで位置合わせするという複雑で手間がかかり、ほとんどの3Dスキャン機器で悩みの種となる作業が不要となり、スキャンデータの精度と完全性を一貫して維持できます。

ステップ2:3Dスキャンの実施と正確なデータの取得

所要時間1時間未満のステップ1のプロセスを完了し、頭蓋骨のスキャン準備が整いました。ただし、大きな頭蓋部を含むこの骨格には、光沢があり、黒く艶のある部分があります。これらは見た目は美しいものの、これほどの大きさのものを素早く正確にスプレーも使わずにスキャンするにも、博物館のニーズにふさわしい解像度を得るにも、普通であれば理想的とは言えません。この問題を解決するため、Measurement Solutions社は、ハンドヘルドタイプの光学式CMM 3Dスキャナー、MetraSCAN 3D™を提案しました。14本のレーザー・スキャン・ラインが特徴のMetraSCAN 3Dは、レーザーが表面の反射や色に自動で対応するため、表面をあらかじめ処理しておく必要がなく、あらゆるタイプの表面を素早くスキャンできます。これには、プロジェクトに関わる科学者も(もちろん技術者も)大いに安心しました。また、複数のレーザーラインを使用すれば、1本のレーザーラインを使用するスキャナーに比べ、一般的に最大で25倍速くスキャンデータを取り込めます。ハンディタイプで、接続アームによる制約もないこの3Dスキャナーは、三脚に取り付けたC-Track™と呼ばれるデジタル画像機器によって、空間内で「トラッキング」されます。このため、セットアップ毎に15 m3を上回るスキャン容積が可能になります。

 展示される頭蓋骨の3Dスキャンを行う技術者

展示される頭蓋骨の3Dスキャンを行う技術者

このシロナガスクジラの場合、非常に複雑な形状を処理するには、MetraSCAN 3Dの標準のスキャン容積ですら十分とは言えませんでした。先にMaxSHOT 3Dでの操作を行ったのはこのためでした。頭蓋骨の周りに取り付けられた連携するターゲットがあるおかげで、C-Trackはスキャンエリア内のどこにでも移動できます。C-Trackは、いくつかのターゲットを検出することさえできれば、三角測量法でスキャン済みデータと比較して自動的にそのターゲットの位置と方向を算出します。このため、常に一貫した精度を維持でき、技術者は、頭蓋骨周囲のどの位置にいても、スキャン中に頭蓋骨が動いたとしても、スキャン作業を続けられます。

ステップ3:リアルタイムでの可視化によるデータ処理

技術者がスキャン・プロセスを通してフル活用したのが完全統合型のデータ取得ソフトウェアであり、全スキャン・プロセスを管理する使いやすいプラットフォームでもあるCreaformのVXelementsです。画面に3Dスキャンの「ライブ」ビューを表示できるため、技術者は、3Dスキャンの品質のみならず、より詳しいデータが必要な領域や完全に欠けている領域も素早く確認できます。また、VXelementsなら、高品質かつ最適化された三角メッシュ構成の表面をSTL形式ですぐに作成できます。そのおかげで、博物館の科学者たちは、非常に手間のかかる労働集約的作業となるクリーニングやフィルタリング、ベストフィットの位置合わせや点群から成るサーフェスの作成といった後処理を行わずに済みました。

長さ6メートルに及ぶシロナガスクジラの頭蓋骨の初回スキャンによる3Dレンダリング・ビュー

長さ6メートルに及ぶシロナガスクジラの頭蓋骨の初回スキャンによる3Dレンダリング・ビュー

当初技術者たちは、シロナガスクジラの頭蓋骨の3Dスキャン作業に数日間を見込んでいましたが、プロジェクトが2日とかからず完了したことにもはや驚きはしませんでした。博物館の科学者たちは、Measurement Solutions社の協力で、最適化されたスキャン・データ・ファイルを得ることができました。このシロナガスクジラのロンドンでのこれからの長い生活に思いもよらないことが起こったとしても、科学者たちには頭蓋骨の3D資料があります。このデータを基に、ロンドン自然史博物館は、3D視覚化に使用できるだけでなく、世界中の博物館に転送してそれぞれが研究に役立てられる、シロナガスクジラの骨格の高精度のデジタル表示を作り上げるでしょう。最も重要なのは、このデータによって、これほどの大型生物がどのように成長するかについての、現在と未来の科学者や保存管理者たちの理解が進んでいくことです。

シロナガスクジラの骨格標本「ホープ」は、現在ロンドン自然史博物館のメイン・エントランスのヒンツェホールに展示されています。間違いなく、ディッピー同様、世界中からの多くの訪問者を魅了することでしょう。

Measurement Solutions社の最高責任者ラン・カヴィル執筆の原本を基に作成

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