唯一無二のドリフトカーとそれを乗りこなすドリフトの達人の感動の物語

Chairslayer's car drifting with white smoke directly on the racetrack

車を完全に横滑りさせながら走り、スライドする方向とは逆にステアリングを切りながら、スロットルの圧力を微妙に調整し、ブレーキをかけて車のバランスを取る。これぞまさしく、ドリフト技術です。ドライバーは、スロットル、ブレーキ、クラッチ、ギア、ステアリングを素早く次々と操作して車を制御できるギリギリに安全に到達させるという離れ業をやってのけ、後輪から白煙を噴き上げながら高速でトラックを回り、アドレナリンラッシュを味わっています。

もし、クラッチ、ギア、シフティング、サイドブレーキ、ステアリングやアクセルの操作を、足を使わずに2本の手だけで行うハンドコントロールカーで行ってドリフトしようとすれば、この究極の操作にどんな技術的課題が加わるでしょうか?

これは、恐ろしいバイク事故から回復を遂げた病院で、ロブ・パーソンズ(Rob Parsons)氏が自らに課した大きな課題でした。ロードドリフトとロードレースへの情熱を追求するため、クラッチとエンジンを足を使わずに操作する唯一無二のハンドコントロールシステムを設計するという課題です。

彼は、手足を使って操作するよう設計された車を、2本の手だけでアクセル、クラッチ、ブレーキを操作してすべて同様の精度で動かせる車へとどうやって作り変えたのでしょうか?どのような技術を使って、このようなメカニズムを設計したのでしょうか?自らの情熱のため、またプロとして、トラックへの復帰をいかに果たしたのでしょうか?さらには、どうやって、自らが示した情熱と熱意に続くよう他の人たちをやる気にさせ、奮起させたのでしょうか?唯一無二のレースカーとそれを乗りこなすドリフトの達人の感動の物語をご紹介しましょう。

唯一無二のドリフトカーを作り上げる

650馬力のドリフトカーへと至る冒険は、ロブが特注で重要部分に構造補強を行ったNissan 180SXシャーシからスタートしました。ロブは、シャーシのフロント部分とリア部分をほとんどすべて取り払い、Speedmaster 1979の6.2リッターのLS V8とT56マグナム6速トランスミッションを収めるスペースを作りました。

この時点までは、ロブは、部品メーカーにプロのアドバイスを求めることができました。しかし、ハンドコントロールシステムの設計となると、オリジナル部品メーカーも未知の分野だったのです。ロブは自らの手で設計せざるを得ませんでした。加速の機能すべてとブレーキペダルを再現する方法に加え、クイックシフトを可能にする方法とハンドブレーキの使用を可能にする方法も見つけなければなりませんでした。つまりは、1本の手で操作可能な、クラッチとギアの完全なシフトシステムを設計しなければならなかったのです。

ハンドコントロールシステム全体の設計

構造は基本的であるとはいえ、真の課題はクラッチとギアの制御だったとロブは言います。プロレベルのドリフトを行うとなった場合に重要なのが、まさに、これらの操作なのです。クラッチとギアボックスを手で操作できるだけでなく、ドリフトを行う操作すべてを正確かつ素早く実行できるようにする必要もありました。

スロットルとブレーキを手で制御することは、バイク式の入力を追加することで可能になりました。つまり、ハンドコントロールを急下降させてアクセルをかけ、ハンドコントロールを前方に押してブレーキをかけるしか方法はなかったのです。しかし、十分にシンプルな方法でした。さらに、クラッチを空気圧で動作させ、ギアボックスをシームレスに動作させる、バイク式のクラッチレバーと親指で操作するボタンを使用しました。この見事なエンジニアリングによって、ドリフトを行う際に必要な、一瞬のクラッチ蹴りとギアの上げ下げシフトが可能になりました。

3D scanning of T-56 transmission while looking at instant result on laptop Close shot of T-56 transmission during design

トランスミッションの細部まで高精細に再現

この独創的な設計が実現できたのは、ロブの創意工夫とHandySCAN 3D | SILVERシリーズをはじめとする革新的技術があったからです。ロブは、空気圧シフトレバーの位置を決めるため、3Dスキャナーを使ってT56トランスミッションの寸法データを抽出しました。

6速ギアトランスミッションをスキャンすることで、1速から6速まで、シフトロッドを動かした場合の各ギアの位置を正確に測定することができました。つまり、スキャンデータを使って周辺環境を視覚化し、その視覚表示に基づいて、トランスミッションの変換と回転を正確に生み出すメカニズムを設計できるようにしたのです。また、3Dスキャナーで周辺環境を測定できたことで、新しく追加するメカニズムによる動きによって、トランスミッションの既存のコンポーネントがどこかに衝突するようなことも全くありませんでした。

これらの位置を手動で正確に測るのは至難の業でした。しかし、HandySCAN 3D | SILVERシリーズを活用したことで、メカニズム設計の基となる位置データ決定に必要な正確さで細部を捉えることができました。初めて製作に挑戦するプロセスで、取り付けの問題が発生することなく、開発に要する時間を概ね数百時間節約できました。

Working on VXmodel with transmission 3D scan

高精度と高解像度

ロブ・パーソンズ(Rob Parsons)氏は次のように述べています。「レーザースキャナーなら、高精細なスキャンが期待できます。HandySCAN 3D | SILVERシリーズを使えば、まさに期待通りのスキャンが得られます」ノイズが取り除かれ、形状合わせも済んだ、極めて高精細のメッシュが得られることは、穴を並べたり、機械加工する必要のある形状や直径を正確に測りたい場合に、非常に大きなメリットです。「キャリパーで測り直す必要もない」とロブも語っています。

New part designed thanks to 3D scanning Testing new 3D designed piece on real transmission

 

より良い設計が可能だからこそ、ピタリと合わせられる

HandySCAN 3D | SILVERシリーズは、頭痛の種を取り除いただけでなく、ハンドコントロールシステムの設計を確かなものとするのにも役立ちました。3Dスキャナーがあったからこそ、ロブは、設計により自信を持てるようになり、費用のかかるR&D試作品に頼らずに済みました。実際、わずかな変更を行う必要がある場合は、部品の加工や取り付け前に、CAD上で確認できます。したがって、ロブは、貴重な開発時間と費用を節約できたのです。これは、より良い設計があるからこそピタリと合わせられるということでもあります。つまり、3Dスキャンによって、そのまま製作できるCADモデルの作成が可能になるということです。設計は一度でピタリと合い、元々そこに取り付けられていたかのように正確でした。

HandySCAN 3D | SILVERシリーズはロブの創意工夫を後押しし、唯一無二のハンドコントロールシステムの設計を可能にしました。その結果、ロブはトラックに復帰し、再び見事なドリフトを見せてくれました。しかし、ロブは復帰初戦のラップでアドレナリンラッシュを味わったからといって、そこで満足してはいませんでした。自らの物語が、障がいを持つ車好きの人たちに、自分たちもドリフトのようなスリルを味わいたいという気を起こさせたと知ったロブは、下半身不随の人たちを自ら設計したハンドコントロール式日産ドリフトカーのような高性能の車の運転席に座らせ、急ブレーキをかけ、タイヤが焦げるような最高のスリルを味わってもらうための非営利団体を設立しました。

唯一無二のドリフトカーを取り上げたこの感動の物語とその歩みを止めないドリフトの達人は、人々の心を奮い立たせ、自らの課題を克服しようという気にさせるに違いありません。

 

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