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モータースポーツの世界では、パフォーマンスを左右するのはほんのわずかなディテールです。厳しいレギュレーションによってエンジン内部の改造が制限されている場合、性能向上の余地はエンジンを取り巻くコンポーネントにしかありません。

今回、その課題に直面したのは、PRO 2 Racer でした。彼らは既存のエキゾーストマニホールドが潜在的なパワーを引き出せていないのではないかと疑っていたのです。しかし、その直感を確かな結果に変えるためには、推測ではなく、エンジニアリングに基づいたアプローチが必要でした。

そこで登場したのが 3Dスキャニング技術。このテクノロジーを活用することで、現状のマニホールドを精密にデジタル化し、流体解析や設計改善に役立てることが可能になります。従来の「経験と勘」に頼る方法から一歩進み、科学的な根拠に基づいた設計へとシフトすることで、 PRO 2 Racer は確実な性能向上を目指しました。

ここで登場するのが、カナダ・ケベックに拠点を置く EP9 Autosport(以降、「EP9」)。空冷ポルシェのレストアやカスタムで名高いこの工房は、クラシック911の再生に注ぐ情熱と熟練の技術を、このプロジェクトにも惜しみなく注ぎ込みました。高性能エンジンのリビルドや、すでに市場に存在しないパーツの開発で培った経験を活かし、EP9のチームはマニホールドの最適化に挑戦。眠っていたパワーを解き放つべく、エンジニアリングの知見を総動員しました。

このブログでは、EP9が Roushエンジンのマニホールド再設計という技術的課題にどう立ち向かい、サーキットで「コンマ数秒」を削り出すために何をしたのかを紐解いていきます。

マニホールド形状の再考:ゼロからの再設計

マニホールドはすでにエンジンに取り付けられていましたが、何の解析も計算も行われていませんでした。初期の設計では、ランナーはただ「シャシーに収まるように」配置されていたのです。その結果、ランナーの形状・長さ・直径といった重要なパラメータは、空気の流れを均等にし、エンジン出力を最大化するために最適化されていませんでした。

エンジンメーカーからは、各セクションの直径や長さ、どのチューブをペアにすべきかといった一般的なガイドラインは提供されていました。しかし、マニホールド全体の設計は未定義のまま。そこでEP9の設計チームは、車両のシャシーという制約条件を満たしつつ、これらの仕様を満たす完全な設計にイチから挑むことになったのです。

エンジンヘッドをスキャンして完璧なフィットを実現

古いマニホールドを取り外した後、EP9は エンジンヘッドを3Dスキャン。フォード系のアーキテクチャを持つこのエンジンの寸法を正確にキャプチャし、新しいマニホールドがぴったり収まるように設計しました。
特に注意が必要だったのは、四角い排気ポートと丸いヘッダーチューブをどう接続するかという点。こうした細部の工夫が、性能を左右するカギとなります。

ランナーのルーティング:理想的なフローを求めて

次にチームが取り組んだのは、ランナーの配置を最適化する作業です。ここで活躍したのが モジュール式のプラスチックキット。このキットを使って、ランナーの形状や位置を手作業でルーティングし、最も効率的な流路を視覚化しました。

さらに、このキットの優れた点は、各セグメントが正確に1インチを表していること。そのため、ランナーの全長を算出するのも非常にシンプルでした。こうして、設計の初期段階で「どのくらいの長さが必要か」を明確に把握できたのです。

プロトタイプをCADモデルへ変換

プロトタイプが完成した後、EP9は HandySCAN 3D | PRO Series を使って物理モデルをデジタル化しました。ここで活躍したのが Scan-to-CAD Pro。このツールを使うことで、設計チームはモジュールキットのスキャンデータ上に直接スケッチやモデリングを行い、最終的には 完全なパラメトリックCADモデルを作り上げることができました。

このプロセスにより、手作業で作った試作モデルの形状を忠実に再現しつつ、デジタル上で微調整や最適化が可能になったのです。まさに「現場のアイデア」と「デジタルエンジニアリング」の融合といえるでしょう。

完璧なフィットを実現

最終的に、完成したCADモデルは加工工程へと送られ、最適化されたジオメトリを持つパーツが誕生しました。それは、エンジンのシャシーにぴったりと収まる、まさに理想的な仕上がり。

この成果は、スキャン → CAD → 加工部品という設計プロセスを完璧に実行した証です。デジタルと実物がシームレスにつながることで、精度とパフォーマンスの両立が可能になったのです。

SCAN-to-CAD Pro搭載のPRO SeriesはEP9の設計プロセスをいかに変えたか

EP9では、 Creaformの3Dスキャニング技術 が長年にわたりツールキットの一部として活躍してきました。特に、空冷ポルシェのレストアでは、入手不可能なパーツを再現したり、既存部品を改良したりするために欠かせないツールでした。こうしたプロジェクトでは、まずオリジナルパーツをスキャンし、正確なリファレンスデータを取得。それを基盤に新しいコンポーネントの設計を進めるのがEP9の流儀です。

今回のプロジェクトで、EP9の設計プロセスをさらに進化させたのが、HandySCAN 3D | PRO Seriesです。このスキャナーは高度なメッシュ補正アルゴリズムを搭載し、複雑なエンジン形状でも非常にクリーンなスキャンデータを生成します。さらに、Smart Resolution機能により、必要な箇所ではメッシュ密度を自動で高めて細部をキャプチャし、重要度の低い部分はスピード重視で処理。高性能カメラとレーザーラインによる強力なメッシュデータ抽出と組み合わせることで、仕上がりデータは精度抜群。コントラストの強い仕上げや難しい表面でも正確な結果を提供します。

そして、ライブメッシュ可視化により、作業者やエンジニアはリアルタイムで3Dモデルの形成を確認可能。次の工程に進む前に、カバレッジと品質を確実にチェックできるのです。

Creaform Metrology Suiteの構成要素であり、HandySCAN 3D | PRO Seriesと連携する Scan-to-CAD Proソフトウェアモジュール を活用することで、EP9は設計ワークフローを効率化しました。高品質のメッシュデータを取り込むと、エンジニアは、フィーチャーの抽出と CAD用のスキャン の準備の前にメッシュ編集ツールを使って素早くデータのクリーニングと最適化を行うことができました。インテリジェントな位置合わせによってCADへの対応が可能なデータとなり、スケッチング作業やモデル化作業を簡略化できました。また、断面図に直接スケッチでき、同じ環境で3Dモデルを構築できる点もEP9チームにとって有用で、手作業でのモデル化時間を短縮できました。最終的に、SOLIDWORKSへのパラメトリック移行によって、エンジニアは、使い慣れたCADプラットフォームでフィーチャー主導のモデルの改善や編集をシームレスに行えました。

スキャンデータから試作品完成までの過程を効率化

3Dプリンターが利用することで、EP9では 構想から試作品完成 に至るまで、現在わずかに1日を要すだけとなっています。HandySCAN 3D | PRO SeriesのワークフローとScan-to-CAD Proとの組み合わせを活用することで、設計チームはスキャンデータから機能確認用の検証可能な最初の3Dプリント部品をあっという間に完成できるため、検証を短期化でき、設計反復をより迅速に行えるようになりました。

以前は、機能試作の製作に、何度も作業を繰り返して数ヶ月を要していました。現在は、HandySCAN 3D | PRO SeriesとScan-to-CAD Proのおかげで、スキャンからCAD、そして3Dプリントの試作品完成に至るまでわずか1日を要すだけとなっています。わが社の設計プロセスに大変革をもたらしてくれました
フェリクス・ベランジェ(Félix Bélanger)氏、EP9 Autosportのエンジニア

以前の測定方法と比較した違いには目を見張ります。以前は、部品を設計し、機械加工に送り、数ヶ月後に戻ってきてみれば、形状が合わないということ、あるいは、思ったとおりに動かないということがわかっただけでした。機能試作が出来上がるまでに、何度も繰り返し作業を行わなければならないことも少なくありませんでした。

現在は、3Dスキャンと3Dプリントによって、機械加工前の部品の微調整にちょっとした作業を2~3回繰り返すだけという場合がほとんどです。最終試作が出来上がれば、追加調整は必要なく、常に難なく機能します。

測定の精度を活かして設計の信頼につなげる

HandySCAN 3D | PRO Seriesはワークフローを迅速化しただけではなく、精度という強固な基盤に基いた設計反復をも可能にしました。信頼できる参照データによって不確実性が排除され、新しいコンポーネントを取り付ける箇所の周辺形状について極めて高い信頼性がもたらされます。

公差が厳しく、利用可能なスペースも限られる自動車製造用途においては、この精度水準が極めて重要です。開発するのがエンジン部品であろうと、性能部品であろうと、取り付け部位の正確な周辺形状を知ることができれば、確実にぴったりと合わせられます。

チームのパワーアップに貢献した直観的ツール

最後に、EP9は、HandySCAN 3D | PRO Seriesがいかに直観的かということを強調しました。スキャンの専門家が不在の場合、他のチームメンバーが代理を務め、経験がなくても、数分で完全なスキャンを無事行うことができました。機器の操作、データ取得ソフトウェアの立ち上げ、スキャンの完了が難なく行えることがわかり、楽しいとさえ感じる体験でした。

結論:効率化と競争力の獲得

CreaformのHandySCAN 3D | PRO Series の力を借りて、 EP9はチームのエンジニアリング知識と細部へのこだわりを反映したマニホールドを設計しました。PROシリーズのおかげで、ジオメトリを洗練し、エンジン性能を向上させ、サーキットで目に見える改善を実現。ドライバーはその違いをすぐに体感しました。

EP9にとって、Scan-to-CAD Proと3Dプリンティングの組み合わせは設計プロセスを完全に変革しました。これにより、今回のような複雑で一点物のプロジェクトにも対応でき、ユニークなパーツを効率的かつ収益性の高い方法で再設計できるようになったのです。適切なツールがなければ、設計段階で膨大なエンジニアリング時間が失われるのは簡単です。しかし、PROシリーズはその時間を大幅に削減し、EP9が高品質なカスタムソリューションを競争力ある価格で提供することを可能にしました。

PROシリーズがあれば、モータースポーツでよくあるこうした課題も、大きな野心を持つ小さな工房にとって手の届くものになります。さらに、EP9はすべてのプロジェクトをスキャンすることで、シャシーやエンジン構成のデジタルライブラリを構築中。このデータベースにより、寸法の再確認や過去の作業分析、設計の継続的改善が可能になり、エンジニアリングの専門性をさらに強化しています。

従来の測定ツールと比べて、HandySCAN 3D|PROシリーズは試行錯誤の反復を劇的に減らします。以前は数か月かかっていた作業が、今では数日で完了。これは、過酷なモータースポーツの世界で偉業を目指すチームにとって、まさに ゲームチェンジャーです。

EP9 Autosportの次なる挑戦

顧客の要望に応え、EP9は現在、新しいポルシェエンジンの開発準備を進めています。これは、新設計のコンポーネントとオリジナルパーツを融合させたもの。もちろん、ここでもPROシリーズが重要な役割を果たし、周囲のすべての面を記録して、各要素が完璧に統合され、最高の性能を発揮できるようにします。

HandySCAN 3D|PROシリーズは、EP9の創造性と効率性をさらに押し上げ、時間を節約し、コストを削減し、エンジニアリングのビジョンを現実に変える力を与え続けます。それは、公道でも、サーキットでも。

 

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