過酷な生産環境でインペラタービンを測定

Centrale idroelettrica in funzione

水力発電所を安全に稼働させ、停電を限定的にとどめるには、測定技術と分析技術に関する専門知識が必要です。極めて重要なのが、発電所の状態の把握だけでなく、各部品にかかる負荷についても正確に把握することです。インペラタービンが現代の厳しい環境下で機能している場合、これは特に重要です。

課題:水力に関わるインペラブレードの形状は、発電の最大化に大きく影響する。では、ブレードの寸法が基準形状から外れているかどうか、どうすれば確認できるか?

各インペラブレードの形状に、(わずかであっても)基準形状からのずれがあれば、発電所全体の水流、すなわちエネルギー効率に深刻な影響が及びます。このため、組み立て前にインペラの各セグメントを測定し、求められる公差と製作精度を満たしているか確認する必要があります。さらに、組み立てたインペラも測定して、組み立て部品として精度が仕様に適合しているか確認する必要もあります。

生産環境では振動や温度変化は当たり前。では、どうすれば、そういった過酷な条件で測定精度を確保できるか?

鉄骨構造の現場で測定を行うには、環境の不安定性に適応できる柔軟な測定技術が不可欠です。不安定な条件下では、測定結果に影響を及ぼす振動や変化を吸収できる、完全固定のセットアップが必要ない測定機器を使用する必要があります。また、近づくのが困難な部品も測定できるよう、機器はポータブルである必要もあります。

インペラタービンの直径や各部品の大きさは5メートル以上もある場合がある。では、このような大型部品をどう検査し、高い精度を確保するか?

極めて高い測定精度と再現性に裏打ちされた検査報告書を作成できるかどうかは、大型寸法に対応できる技術を選ぶかどうかにかかっています。質の高い報告書を作成するなら、写真測量(フォトグラメトリー)をおいて他にありません。写真測量は、一連の2D写真を基に、3DスキャナーやポータブルCMMといった他の機器で使用可能な高精度のポジショニングモデルを三角測量法を用いて生成します。

水力発電所は常に検証義務の重圧にさらされている。では、インペラタービンをどのように検査して業界最高標準を満たすようにできるか?

ここ数年で、検証義務と測定結果の文書化が不可欠となり、発電所のメトロロジー機器に対する要件はますます高く、厳しくなっています。最新の技術は、今や、これらの要件を満たさなければなりません。測定結果は、CADモデルと照らし合わせる必要があり、狭い公差域に確実に収めなければなりません。巨大な電気機械システムの完全性は、品質検査にかかっているのです。

 

HandySCAN 3Dを使い、ざらつきのある表面にブルーレーザーを照射してインペラ内部をスキャンしている様子

Photo credit: Andritz

インペラタービンのカラーマップ  

 

ソリューション:高精度、高速、直感的かつポータブルな3Dスキャン技術

携帯性に優れているとは、生産環境向けに設計されているソリューション、つまり、現場の振動や部品の移動、環境の不安定性の影響を受けないということです。完全固定のセットアップ不要のため、測定システムそのものを、一連の測定中いつでも自由に動かすことができます。

高精度とは、特に大規模プロジェクトや大型部品において、写真測量による高いデータ精度と能力を発揮できるということです。このメトロロジーソリューションの場合、測定精度が環境の不安定性の影響を受けないため、過酷な環境でも、どのような大きさの部品の幾何学的エンティティも正確に測定できます。

高速とは、短時間で測定を行え、即データ分析が行えるということです。インペラブレードの全体形状のスキャンを素早く詳細に生成できます。

優れた簡便性を実現しているのは、メトロロジーの知識の有無にかかわらず、誰もが使える高度なユーザーガイダンス技術とレーザー投影ソフトウェアフィードバック機能です。

高精度、高速、直感的かつポータブルな3Dスキャンソリューションを代表するのが、MaxSHOT 3Dなどの写真測量用カメラ、PolyWorks Inspectorソフトウェア搭載のHandySCAN 3Dといった3Dスキャナーです。

 

現場でHandySCAN 3Dを使ってタービンをスキャンするANDRITZ社社員

Photo credit: Andritz

 

特長:インペラブレードの欠陥を容易に特定でき、修理できるのは、高精度、高速、優れた簡便性と携帯性を備えているからこそ。

3Dスキャンによって、ブレードの寸法情報をターゲットデータ(CAD)と照らし合わせて分析できます。エンジニアは、カラーマッピング機能を使って、測定結果を素早く、簡単、明確に理解できます。

時間の節約

このメトロロジー機器なら、測定プロセスを加速でき、データ分析やモデル比較にかかる時間を短縮できます。直感的なインターフェースを備えているため、測定の実施や3Dスキャンデータの分析にメトロロジー専門家の手を借りる必要はなくなります。

プロセスの信頼性の向上

高速テクノロジーの導入によって測定プロセスに中間段階を組み込めるようになれば、プロセスの信頼性向上に役立ちます。したがって、組み立て前にインペラタービンを測定して、求められる公差と製作精度を満たしているか確認でき、組み立て後は、組み立てた部品の精度が仕様の規定寸法を満たしているかも確認できるようになります。

2年で投資額を回収できるだけでなく、新たな可能性も生まれる

新たな測定システムへの投資はわずか2年で回収可能で、以降年間のコスト削減も実現できます。測定システムは、使用できる図面やモデルがない場合、古い部品からCADデータを作成したり、リバースエンジニアリングなど、別の様々な用途にも活用できます。

 

インペラタービン内でMaxSHOT 3D写真測量機器を使用するANDRITZ社社員

Photo credit: Andritz

 

お客様:ANDRITZ Hydro GmbH

ANDRITZ Hydro社は、水力発電所向けの電気機械設備・システムの世界的メーカーであり、世界の水力発電市場を牽引する企業のひとつです。オーストリアのウィーンに本社を構えるANDRITZ社は、全世界に30,000を超えるタービンを設置してきました。これは、420,000 MW以上の電力を生み出せる量です。

ANDRITZ社の既存のメトロロジー機器ポートフォリオにHandySCAN 3DとMaxSHOT 3Dが加わったことで、測定プロセスに一層の柔軟性がもたらされるようになりました。今や、ANDRITZ社は、自社の生産工場や取引業者の社屋のみならず、顧客の建設中の現場といった様々な場所で測定を実施できるようになっています。3Dスキャナーの使いやすさは、測定プロセス全体の強化と迅速化につながっています。

また、Creaformの測定システムの費用対効果にも大いに満足しています。

ANDRITZ社のメトロロジー責任者であるイェナー・コルクマツ(Yener Korkmaz)氏は次のように述べています。「Creaformの技術が、私たちを新たなレベルへと引き上げてくれました。これまで使用していた測定機器の設計では無理だった部品のデジタル化と測定が行えるようになったのです。Creaformの測定技術は実に革新的であり、操作も容易です」

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