3Dスキャナー:プロ向けの購入ガイド

3Dスキャナーは、目下、注目を集めています。3Dスキャナーは、、2021~2026年にかけ、CAGR(年平均成長率)7.5%で拡大すると複数の報告書で予測される市場を持つ先端技術です。3Dスキャナー市場は2030年には166億6000ドルに達する可能性があることを示唆する研究もあります。

では、3Dスキャナーとはどのようなものなのでしょうか?どのように活用されているのでしょう?用途に合った3Dスキャナーを、企業はどうやって選んでいるのでしょうか?この記事では、3Dスキャンについて押さえておくべき事柄を取り上げます。

3Dスキャナーとは

 3Dスキャナーは、非接触型かつ非破壊検査にも活用される装置で、対象物とそれを取り巻く環境をレーザーによって3D測定し、デジタル・データとして取り込みます。ユーザーが対象物をスキャンすると、3Dスキャナーは、レーザーから出たコード化パターン光を投影します。このコード化パターンによって対象物の形状を特定し、形状のデジタルデータが作成されます。

対象物のデジタルコピーは、3Dモデルの表現の1つであるポリゴンメッシュ・ファイルとしてエクスポートでき、様々なコンピュータ支援設計(CAD)や検査、3Dプリント・ソフトウェアで利用されます。

HandySCAN BLACKを手で持って、テーブルの上の航空機体の着陸装置の部品をスキャンしているところ。背後にはスキャン・データを表示した画面

3Dスキャナーでできること

ブランドやメーカー、型式によりますが、3Dスキャナーは、形状の複雑さや大きさ、材質や表面仕上げを問わず、あらゆる対象物をスキャンできます。事実、特殊な3Dスキャナーなら、人体や建造物をスキャンすることも可能です。

ハンディタイプのポータブル3Dスキャナーもほぼどのような場所でも使用でき、周辺環境の如何を問わず、正確な3D測定データを収集します。製造現場での部品のスキャンであろうと、掘り返されたパイプラインのスキャンや到達が困難な、車両内部の超小型部品のスキャンであろうと、3Dスキャナーなら、その後の工程に必要なデータを作成できます。 

3Dスキャナーを活用している業界とは

自動車産業、電力産業、航空宇宙産業、金属加工産業で使われるGo!SCAN、HandySCANとMetraSCANの4枚の写真

3Dスキャナーはどういった場所で使われているのでしょうか?簡単に言ってしまえば、事実上あらゆる場所で使われています。3Dスキャナーは、その基本的な考え方に基づいて、物理的対象物の3Dモデル(または複製)の作成に貢献しています。つまり、以下のような多種多様な部門の専門家たちが3Dスキャナーを活用しているということです。

  • 航空宇宙
  • 輸送および自動車
  • 消費財
  • B2B製造
  • 教育
  • 重工業
  • 医療
  • 遺産、芸術および建築物
  • 石油・ガス
  • 発電
  • 他にも多くの部門で活用されています。

 3Dスキャン技術が民生用途に広く普及したおかげで、手頃な価格のプロ仕様の3Dスキャナーが、愛好家や芸術家、機械や部品の修理や実験を楽しむ人々まで、ありとあらゆる人たちの役に立っていることが明らかになっています。より入手しやすい3Dスキャン・ソリューションを活用して行われている素晴らしいプロジェクトのいくつかをご紹介しています。ぜひ、ご確認ください。

3Dスキャナーの具体的な活用法とは

3Dスキャナーがよく使われている業界がわかったところで、製造業をはじめとする、3Dスキャナーの幅広い用途を見ていくことにしましょう。でも、お忘れなく。3Dスキャナーの活用は、製造現場に限りません。

以下がその例です。

用途
製品開発および設計 3Dスキャナーを活用し、高性能のオンロードおよびオフロード用スポーツバイクといった革新的な新製品の開発を進めるエンジニアや工業デザイナー。
3Dプリント(積層造形) 3Dスキャナーや3Dプリンターを活用し、部品や完成品の試作品を迅速に製作する設計チーム
リバース・エンジニアリング 3Dスキャナーを活用して、自動車業界のアフターマーケットといった、オリジナル3Dモデルのない重要な部品のリバース・エンジニアリングを行う生産チーム。
品質管理および品質保証 高性能の3Dスキャナーを活用して、大型部品の積層造形工程の品質管理を向上させた検査チーム。
MRO(整備・修理・分解点検) 3Dスキャナーを活用して、航空機部品の致命的な損傷を評価するMRO専門家。
非破壊検査(NDT) 3Dスキャナーの活用によって実施が容易になった原子力発電所における検査
科学および教育 それぞれの分野における3Dスキャナーの活用方法を未来のエンジニアや工業デザイナーたちに教える研究者や教授。
医学・医療 3Dスキャナーを活用して、特注成形の頭蓋形状矯正ヘルメットを製作する医療従事者や医療技術者。
遺産、考古学、建築物および芸術 3Dスキャナーを活用することで、遺産や芸術の保全および保管が容易になった保存修復士。
マルチメディア、視覚効果およびメタバース メタバースにおけるデジタルアートや3Dモデルの非代替性トークン(NFT)の作成に役立つ3Dスキャナー。
建築物および建設 建築業界では、実施設計の検証から建造物の3Dモデルの作成のあらゆる工程で3Dスキャナーの活用が増えている。

 

レーザー・スキャンと固定式のCMMスキャンとの違いは?

テーブルの上の鋳造部品の測定に使われるMetraSCANの写真(右側)と、小さな部品を測定する従来型CMMの写真(左側) 

様々な種類の3D測定ソリューションが市販されていますが、よく比較されるのが、ポータブル3Dスキャナーと固定式の座標測定機(CMM)です。

いずれの技術も、プロ仕様にふさわしい精度レベルを備えています。CMMは、頑丈な花崗岩の基底テーブル、ガントリーまたはブリッジに固定したアームと接触測定に使用するタッチプローブとで構成されています。CMMは、振動、ほこり、湿度に非常に敏感なため、ラボまたは専用ルームに設置されるのが一般的です。CMMの最大の利点は精度が高いことですが、経験豊富な測定の専門家が操作する必要があるため、作業に時間がかかり、柔軟性に欠けます。部品をCMMのある場所まで運ぶ必要があり、このため、スループットの向上を妨げるばかりか、大型部品にも不向きです。

ポータブル3Dスキャナーも概ね高精度です。ブランドや型式によりますが、高速で3D測定データを収集できます。また、直観的インターフェースと人間工学的設計により、習熟度に関係なく、誰でも簡単に使えます。しかも、携帯性と堅牢性も兼ね備えた3Dスキャナーなら、製造現場や屋外でも使用できます。データの精度や信頼性、再現性を損なうことなく、過酷な状況に耐えられるのです。

この2つの技術双方に投資をする製造企業も少なくありません。極めて高いレベルの精度が求められる非常に重要な検査にのみCMMを使用し、それ以外の3D測定に3Dスキャナーを活用して、CMMによるボトルネックを排除し、全体的な生産性を向上させているのです。

3Dスキャナーの価格は?

3Dスキャナーの価格は、品質と性能レベルによります。

安価な3Dスキャナーなら、1,000ドル以下で購入できます。中間価格帯は数万ドルです。メトロロジー・グレード(工業用寸法検査グレード)の3Dスキャナー、特に、厳しい公差や基準が設けられている自動品質管理やインダストリー4.0に基づいた精密な工程、重要な製品設計に用いられるものは、10万ドルを超える場合もあります。

まだ導入実績のない企業では、標準以下の3Dスキャナーを使用して運用費が大幅に増えたり、ビジネスに大きな打撃を与えるようなリスクを避けようとする場合があります。安価な3Dスキャナーを専門的な用途に使用することが大きな誤りである理由をいくつか挙げます。

  • ふさわしい精度レベルに達していない3Dスキャナーで航空機部品の検査を行えば、乗客が致命傷を負うような墜落事故につながる恐れもあります。
  • 石油やガスのパイプラインをNDTによって評価する場合、不正確なデータでは、検査官は、ひび割れや腐食といった潜在的な損傷を発見できず、その結果、近隣住民や周辺環境を危険にさらす大惨事を引き起こしかねません。
  • メーカーの新車の品質管理チームがサブアセンブリの欠陥を見逃してしまった場合を想像してみてください。それが、後に、大規模かつ多大な損害を伴うリコールを行わなければならない事態を招くことになりかねません。

こちらから、安価な専門家向け3Dスキャナーに関連する問題に関するより詳しい記事をお読みいただけます。

用途に合った3Dスキャナーの選び方

特定の用途にふさわしい3Dスキャナーを選ぶには、様々な要因を考慮する必要があります。プロ仕様のメトロロジー・グレードの3Dスキャナーを選ぶ場合、何を考慮すべきでしょうか?

3Dスキャナー・システムを購入する際には、必ず、以下の基準と機能性を考慮するようにしてください。

  1. 精度と再現性:3Dスキャナーに求める精度レベルはどのくらいですか?厳しい公差が設定されている用途ですか?あるいは、厳しい基準の順守が求められる用途ですか?上記が当てはまる場合、選択する3Dスキャナーで正確かつ再現性のある測定結果が得られると確信できなければ、安心できないでしょう。
  2. 解像度:精密なデータで評価を行う用途の場合、解像度から見たスキャン・データ出力の品質が重要になってくるでしょう。解像度が高ければ高いほど、3Dモデルの精密度も高くなります。
  3. スピード:チームにとって効率性は必要不可欠ですか?市場投入までの製品化にかかる時間の短縮が必要な製品を設計していますか?安価な3Dスキャナーは、プロ仕様の3Dスキャナーに比べ、データの取り込みにはるかに多くの時間を要する可能性があります。
  4. 操作しやすさ:他の3Dスキャナーよりも操作しやすいものがあります。3Dスキャナーを実際に試してみて、直観性や人間工学が考慮されているかを必ず確認してください。複雑なセットアップや使い方によってチームの作業が滞ることだけは避けなければなりません。
  5. 部品のサイズ:通常、3D測定を行う部品は小型ですか?大型ですか?それとも、あらゆる大きさのコンポーネントですか?3Dスキャナーの仕様書に、必ず、サイズ範囲がmm、cmまたはmで記載されているはずです。
  6. ポータブルであること:評価中の3Dスキャナーはどれくらい携帯用の機器として扱えるでしょうか?本当にポータブルな機器であれば、外部の位置決め装置を使用する必要はありません。3Dスキャナーは、製造現場でも、フィールド・ワーク用としても、不安定な場所や管理されていない場所、狭い場所でも使用できる完全なスタンドアロン型である必要があります。ここから、ポータブル型の3Dスキャン技術がいかに重要であるかについてのより詳しい内容をお読みいただけます。
  7. 3Dスキャン・ソフトウェア:すべてのメーカーが、3Dスキャナーとシームレスに機能する統合型の3Dソフトウェア・プラットフォームを提供しているわけではありません。この種のソフトウェアは、様々なモジュールや、スキャン・データのCADソフトウェアへの移行や寸法検査の効率化を容易にするといった機能を備えています。スキャン後のプロセスを全く新しいレベルへと引き上げてくれるソフトウェアを使うことで、3Dスキャナーを最大限に活用できるようになります。
  8. トレーニング、サポートおよびメンテナンス:3Dスキャナーに投資する場合には、メーカーが地域で提供するトレーニングやサポート、メンテナンスの各サービスのレベルを慎重に見極める必要もあります。高品質・高性能の3Dスキャナーのメーカーは、直接あるいは認定販売代理店網を通じて、優れたアフターサービスで機器をサポートします。

3Dスキャナーの補足資料

3Dスキャナーについてさらに詳しくお知りになりたい場合は、以下の資料をご確認ください。

 

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